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五感で感じるSTEAMスタディーツアー@徳島 - 大阪府立桜和高等学校

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五感で感じるSTEAMスタディーツアー@徳島

本校では、「自然との共生」をテーマとしたSTEAMスタディーツアーを実施しました。本ツアーは、徳島県の自然景勝地や関連施設を訪問し、実際の環境や取り組みを五感で体験しながら、地域が抱える課題や持続可能な社会のあり方について考えることを目的としています。事前学習から現地調査、チームでの対話、校外でのプレゼン発表までを一連の探究活動として位置づけています。

今回は2年生5人、1年生4人がツアーに参加しました。

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12月17日に実施した第1回ミーティングでは、生徒一人ひとりの興味関心を出発点とし、意見を共有しながらグループごとの探究テーマを設定しました。環境問題、観光資源の活用、デジタルの活用方法、持続可能な資源循環など、多様な視点が挙げられ、旅の中で調査してみたい問いをチームで探していきました。

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1月9日の第2回ミーティングでは、ツアー各地で行う調査内容を具体化し、「どの場所で、何を見て、どのような調査を行うのか」を明確にしました。事前に問いを設定することで、現地での観察や聞き取りを目的意識のあるものにすることを狙いとしています。

1月10日当日の朝、桜和高校に集合し、徳島に出発です。

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バスで大鳴門橋上を移動中、車窓から鳴門海峡を。うずしおも一瞬見ることができました。

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最初の目的地の阿波の土柱は、今から100万年から130万年前の太古の時代に吉野川の川底に堆積して作られた土柱礫層(段丘礫層)が地殻変動で隆起して、その後、風や雨に浸食されること約3万年もかかって現在の形状となった景勝地。

現地では、自然が形成した不規則な形状感を実際に目で確認することができ、実物の巨大なスケール感を味わいました。

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また、頂上部には明確な柵が設けられていない部分があり、自然をそのまま残す姿勢について考えることもできました。この下は約50m~20mほどの垂直の崖。

はらはらしながら見下ろします...

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自然景観の保全、観光活用、安全管理をどのようにバランスさせるかという点は、「自然との共生」を考える上で重要な視点となりました。

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続いて、道の駅 くるくるなるとを訪れ、お昼ご飯↓

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その後、上勝町ゼロ・ウェイストセンターを訪問しました。上勝町は徳島県の山間部に位置する人口約1,500人の小さな町であり、日本における「ゼロ・ウェイスト」の先進地として知られています。本訪問では、町の歴史的背景から現在の分別体制、そして今後の展望などを学びました。↓

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上勝町では、現在の分別制度が始まる以前、ごみは各地域や家庭単位で野焼きし、焼却に近い形で処理されていた時期がありました。山間部の小規模集落では、ごみを集中的に処理する施設がなく、生活の延長としてその場で燃やす方法が一般的であったとされています。その後、簡易的な焼却炉が設置されましたが、1990年代に入りダイオキシン類対策特別措置法などの環境規制が強化され、従来の焼却方法を継続することが困難となりました。

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新たな高性能焼却炉の建設には多額の費用が必要であり、町の規模を考えると現実的ではありませんでした。こうした背景から、上勝町は「燃やさない」「埋め立てない」という方向へ大きく方針を転換し、ゼロ・ウェイストの取り組みへとつながっていきました。2003年に日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を行いました。

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この宣言では、「2020年までに焼却・埋立処分をなくすこと」を目標に掲げ、町民主体での資源循環型社会の実現を目指しました。

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ゼロ・ウェイストセンターには、紙類、金属、プラスチック、ガラス、布類など細かく分類された回収場所が設けられており、町民自らが持ち込み、分別を行います。素材ごとに再資源化の方法や行き先が異なるため、分別は単なる作業ではなく、「これは何からできているのか」「どこへ戻っていくのか」を考える行為そのものとなっています。

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施設内では、分別の理由や資源化率、これまでの成果についても説明を受けました。分別を徹底することで、上勝町ではごみの約8割以上が再資源化されており、全国平均と比べても非常に高い水準を維持しています。一方で、複合素材でできた製品や、リサイクルが難しいプラスチック類など、分別しても最終的に処理が困難なものが存在することも課題として示されました。

実際、お話を聞いて分かることも非常に多く、ポジティブな面はもちろん、現状の部分も聞かせていただけたことが印象深かったです。

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また、施設にはリユースを目的とした「くるくるショップ」が併設されており、まだ使える衣類や日用品を無料で持ち帰ることができます。ここでは、「ごみを減らす」という考え方が、単なる処理の問題ではなく、消費行動そのものを見直すことにつながっていることが実感できました。

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持ち帰りたいものがある場合、重さを測ってノートに記録し、持ち帰ります。

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上勝町の取り組みは、理想論としての環境保全ではなく、限られた条件の中で選択された現実的な判断の積み重ねによって成り立っていることが分かりました。同時に、その場でインタビューすることでしか聞けないお話も聞かせていただき、遠くの地からインターネットで調べて分かることと、実際に見聞きして分かることの違いも感じました。

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本訪問を通して、生徒たちは「ごみをどう処理するか」だけでなく、「そもそも出さないために何ができるのか」「自分たちの生活はどのような前提の上に成り立っているのか」「地域全体での合意形成の重要性」という問いに向き合う機会を得ました。

自然との共生を考える上で、日常生活と社会システムの関係を具体的に捉える重要な学びの場となりました。

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夜は月ヶ谷温泉の宿に宿泊し、夕食後の振り返りでは、ORID(オーリッド)の手法を取り入れたミーティングを行いました。↓

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「事実(Objective)」「感じたこと(Reflective)」「意味や価値(Interpretive)」「今後の行動(Decisional)」の段階に沿って対話を進めることで、体験を整理し、翌日の調査につながる視点を明確にしました。感想にとどまらず、問いへと昇華させることを意識した振り返りとなりました。

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宿泊地である月ヶ谷温泉周辺は、山間部の自然に囲まれた環境。2日目の朝食後、谷を挟む地形や川の流れを感じながら散策。つり橋は、板と板の合間が広く、恐る恐る渡りました。

少し雪が降り始めます↓

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もう一つの橋は所有者不明の張り紙が。

こちらも渡ってみました。高さがないので、みんなにっこり☺↓

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2日目は最初に、あすたむらんど徳島を訪問しました。

あすたむらんど徳島は、科学技術を体験的に学ぶことを目的とした施設であり、物理、化学、生命科学、情報技術など、幅広い分野の展示が設けられています。

大阪・関西万博のヨルダン館が移設されていたので、記念撮影↓

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あすたむらんど徳島では科学を学ぶという立場にとどまらず、「科学をどのように教え、どのように体験してもらうか」という教育者の視点からも施設を見学しました。

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展示は、単に知識を伝えるのではなく、来館者が自ら操作し、試行錯誤することを前提とした構成になっています。

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生徒たちは、体験しながら、各展示に対して「なぜこの形なのか」「なぜこの順序なのか」と意図を読み取ろうとしている場面もあり、学習内容と展示、体験とデザインとの関係を考えました。

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科学的事象をどのように可視化し、理解につなげるか?という問いは、学ぶ側から教える側へと視点を移すことで深まる問いです。施設にあるたくさんの展示は、未就学児~小学生向けのものも多く、高校生になった生徒たちは、その展示の意義をどう考えるのでしょうか?

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お昼は道の駅「いたの」で休憩し、ツアーの最後には、大塚国際美術館を訪問しました↓

大塚国際美術館は、世界各地の名画を原寸大で再現し、陶板によって展示する美術館です。生徒たちは、西洋美術史を代表する作品群を一度に鑑賞できる空間に身を置きながら、「本物とは何か」「再現とは何を可能にするのか」という問いに向き合いました。

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圧巻の展示!ミケランジェロによる「最後の審判」が美術館の入口で出迎えてくれます。

陶板による複製技術は、劣化しにくく、環境条件に左右されにくいという特性を持っています。そのため、作品を長期にわたり保存・公開することが可能となり、文化や芸術を次世代へと継承する新たな方法として機能しています。ここでは、芸術作品そのものだけでなく、それを支える材料技術や製造技術、デジタル技術の存在が重要な役割を果たしていることが理解されました。

一方で、陶板の表面表現は、実物が持つ質感や空気感には及ばないと感じる場面も。

複製は多くの人に鑑賞の機会を開くという大きな利点を持つ一方で、「本物とは何か」「リアルさはどこに宿るのか」という問いを改めて投げかけます。

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本物を前にしたときの緊張感や時間の積層は、複製では完全に再現できない要素でもあります。

しかし、複製だからこそ現実では不可能なことが可能になることもあります。

それは比較や思考の出発点として有効であり、教育の場においては、美術史や技術、価値観の違いを横断的に考える教材となり得ます。

複製と本物を対立させるのではなく、それぞれの役割を理解し、どのように学びに生かすかを考えることの重要性を実感しました。

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豪華な椅子です!

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陶板なので、実際の美術館ではできない「触れる」が可能に↓

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人間の創造性によって生み出された芸術作品が、科学技術の力によって保存・共有され、多くの人々に開かれていく。この循環は、STEAM教育が目指す「分野横断」の事例にも似ていますね。

美術館の前で写真撮影↓

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その後、大阪へ帰路に。一連の見学を通して、生徒たちは、自然環境から社会システム、科学技術、文化・芸術へと視点を移しながら、たくさんの体験をしました。

現地での体験を通して得た気づきは今後の探究活動において、自分たちなりの問いを深めていくための重要な手がかりとなります。旅そのものはここで一区切りとなりますが、探究活動はここからが本番です。

ツアーで得た経験や刺激をもとに、2月上旬の発表に向けて、2年生、1年生のチームに分かれ問いを進めていきます。

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その様子はまたご報告します!

ツアーおつかれさま!