校長日記其の三百六十七~縁は異なもの~
「縁は異なもの」とは、少し艶っぽいタイトルになったが、単に偶然と縁の深さに驚いた話。
毎朝、京橋門で登校する生徒たちとあいさつを交わしているが、生徒たちは電車到着後、だいたい一塊になって登校してくるので、その際はなかなか挨拶以外の会話をするには、タイミングが難しい。そこで、次の一団までの少し間が空いた時に、一人か二人で登校してくる生徒が、運悪く私の会話のターゲットとなる。ところが残念ながら、本日は延着のせいもあり、登校の一団がいつもより大きく、なかなか途切れないし、途切れた際に登校する生徒も少ない。
そんな時、たまたま一人の女子生徒が登校してきた。見るからに1年生、とふんだ私は「もう学校には慣れたか?」と声をかける。「はい...まぁまぁ慣れました」という返事を勝手に期待していたが、「まだまだ...ですね」と微妙な顔。「そうか、これからやしな」と言うと、「でも、学校は楽しいです‼」と明るい声になる。ほっとした私に、「校長先生ですよね?私、実は〇〇の姪なんです」と言う。「ん?〇〇?」「はい、今校長先生してはるわ、って教えてもらいました」と言う。「〇〇...???あぁ、もしかして、あの〇〇か⁉」と、私が24歳の時の教え子の顔と名前を思い出す。なんと、あの〇〇の姪かいな...。講師として一年間お世話になった学校で、当時3年生で野球部だった。私も転勤し、卒業後30年ほど会うこともなかったが、つい4年前に仕事場に顔を見せてくれた。当時と変わらぬ気骨のある誠実な男だった。一団の長い合間に、たまたま声をかけた生徒が、その姪とは驚いた。「そうやったんか。それは、びっくりしたわ。でも、学校が楽しいのは何よりやな。頑張れよ」と生徒に声をかけると、笑顔で校舎に向かっていった。
ふとかけた 声が昔を 呼び戻す
教師になって何が一番うれしいかというと、卒業生や教え子がしっかりと力強く生きていること。その子にあたる世代と出会えるなど、この上なき幸せ。同時に、人を教える重みを実感した朝だった。東高校の千名近い生徒にも、一人ひとりにそれぞれの背景があるし、これからの人生にドラマがある。そう思うと、無性にワクワクする。