校長日記其の四百三十~ヒロシマ、ナガサキを思ふ~
1945年8月6日、9日の出来事について、一年中何か思いを持って過ごしているわけではないが、この時期になると、テレビやニュースで話題に上ることもあり、自然と「ヒロシマ」「ナガサキ」について考える時間を持つ。また、幸いこうして、ほぼ毎日日記を書かせていただいているので、戦争や原爆について、ゆっくり考えを整理できるので誠にありがたい。
一昨日、大学時代の友人から、「うちの両親が、本の一部で取材されたので、よければ...」と、一冊の本を紹介された。タイトルは、「『ヒロシマ 消えたかぞく』のあしあと」。著者の指田和(さしだ かず)さんが2019年に書いた絵本「ヒロシマ きえたかぞく」(2020年第66回青少年読書感想文全国コンクール小学校高学年の部課題図書)のその後、指田さんが縁あって取材したご家族、鈴木六郎さん一家のあしあとをたどったノンフィクションである。
"縁あって"と書いたが、別に指田さんと鈴木さん一家とは何の縁もゆかりもない。指田さんが、2016年に広島平和記念資料館を訪れた際にたまたま目についた家族の白黒写真が気になっただけである。しかし、その楽しそうな家族の数枚の写真が、指田さんに、あらためて戦争や原子爆弾の恐ろしさ、理不尽さを強く感じさせたのである。
そして、指田さんは、鈴木さん一家の写真から、自分自身が感じた思いをこめて一冊の絵本に託す。その絵本を読んだ方々からの感想にまた心が動く。指田さんは、原爆によって一家全滅した鈴木さん一家の「あしあと」を残そうと奔走する。親戚の方や、近所で生き残った方の証言を頼りに元の実家にたどり着く。また、鈴木さん一家が生きていた証として、戦没者名簿に鈴木さん一家の名前を追記する。
楽しく過ごしていたご家族、そして未来ある子供たちの明日を奪った原爆の恐ろしさ、戦争への怒りを表現する方法はさまざまあり、無数の被害者の無念さは消えることはなかろうが、少なくとも"縁あって"指田さんの目に留まった鈴木さん一家は救われたに違いない。
一方、「ナガサキ」は、まさに相撲でいう"ダメ押し"、仁義なき点からもやるせなきことこの上なし。
と、このような本を読み、関係の記事等を読みつつ、「忘れない」ことしか私にはできないが、今目の前にいる高校生に、「今を一生懸命生きること」の大切さはしっかり伝えたい。
汗ぬぐい 白い雲見て ホッとする
知りて驚き、学びて考え、今を生きて、明日を創ろう、東高生!