校長日記其の六百四十五~1学期を終えて~
毎朝、3年男子生徒2名が7時前に登校し、HR教室で受験勉強に励んでいる。私の記憶では、2か月ほど前からになる。今の3年生は、私とともに東高校に入学したので、向こうはどうか知らないが、愛着が深い。うち一人は、元同僚の知り合いという縁もあり、話す機会も多い。二人とも少し眠たそうな顔で、教室の鍵を取りに来るが、頑張る意欲は自然と身体からにじみ出ている。好青年だ。全力で応援はするが、結果を勝ち取るのは本人。先は長いようであっという間だ。第一志望の大学合格めざして頑張れ!
昨日の放課後は、京橋門から校舎に戻る際、グラウンドの片隅で、ソフトボール同好会の1年生2名が交替でノックを打っていた。が、二人とも初心者ゆえ、上手く打てていなかったので、ついつい血が騒ぎ、「ノック打とか?」と聞いた。人よりちょっぴり大きめの身体ゆえ、部員は「え、打てるんですか?」と当たり前のように言うので、ちょっぴり傷つく。「一応、高校野球の監督やってたからな」と言って、一人30本程度ノックを打った。初心者と言うが、なかなか上手だ。少しアドバイスしたあと、名前を尋ねると、流行りなのか、独自性なのか、二人とも"粋な"名前だ。練習を重ねて、いいプレーを!
名前の件で余談だが、毎年、生徒の名簿を見ながら、顔と名前を一致させる。最近は、生徒の名前を無意識にクイズ形式にしてしまう。数通りある読みを頭に浮かべながら答えを出すのだが、当て字も多く、え、そう読むの?という驚きや、あぁ、そう来たか!という感嘆、なるほど...と言う納得もありで、非常に楽しい。親御さんの子どもを思う気持ちや、名前に込められた願いにも思いを馳せて、一人勝手に感動している。親御さんの思いを受けて、生徒たちも成長してくれれば言うことはない。
さて、忙しい中、そのような生徒との接点を喜びつつ、本日1学期の終業式を迎えた。コロナ禍が明け、制限がなくなった教育活動をどのように復活し、よりよいものとして発展させていくのか、新しい視点も取り入れ、教職員一人ひとりが模索しながら「チームHIGASHI」で全力で取り組んでくれた。3年前から始まったコロナ禍において、おそらく前代未聞の市立高校の大阪府への移管という大仕事に加え、「新学習指導要領の実施」とそれに伴う「新しい教育課程」に「観点別学習状況の評価」、さらには来年度からの「大学新共通テスト」など、新しい仕事、新しい考え方を勉強し、研修しながら、生徒に還元していかなくてはならない。そして、その多大な業務量を抱えながらも、一方で、働き方改革の名の下、早く帰れ、早く帰れ、と言われる。翻って、足し算引き算という小学生で習う計算が社会で通用しないパラドックス。いやはや、世の中は理不尽だと大人の振る舞いを心がけてきたが、60歳近くなってくると、ほとほと我慢も限界・・・いや、今しばらく、か。先を見ても、定年が延長されるというが、いったい誰のため、何のための延長か。どこかのCMではないが、「そこに愛はあるんか?」という声が聞こえる。
海外逃亡の前日ということで愚痴が過ぎたが、こんな不真面目な私と違って、誠実な東高校教員集団は、目の前の生徒たちに必要な教育活動や本校独自の取組を、熱い思いをもって、つらい顔一つせず、前向きに進めてくれている。明日から一か月、暦では夏季休業となるが、夏期講習や部活動指導は続く。各自、少しでも充実した休暇を取り、リフレッシュしてほしい。
終業式は、暑さ回避のため、恒例となったGoogleMeetを使用してのオンライン終業式。以前は放送だったらしいが、ここに来て、コロナ禍で培った技を使わないという手はない。私の目的は、とにかく生徒にインパクトを残すこと。愚痴ついでに申し訳ないが、自分自身の学校生活で、校長先生の顔など数名しか覚えていないし、何を話してくれたのか全く記憶にない。達観した方は、校長の話とは得てしてそういうものだと言われるが、それではあまりにも寂しい。「Challenge、Connect、Changeだ!」といいながら、自分は何も挑戦しないのでは説得力に欠ける。格好をつけるわけではないが、「挑戦ありき、失敗してナンボ」だ。
回り道をしたが、終業式では、最近ことに話題の「生成AI」について、文科省のガイドラインに沿って、使用に際して留意すべきことを話した。そもそも「生成AI」という名付けに感心する。誰が名付けたか、的を射ている。だからこそ、的を射た活用法をそれぞれで見い出すべきだ。スマホもしかり、機器や機能に罪はない。物事が進化するたびに人間の「良心」が試される。便利は不便、人間の価値はどこにあるか。AIに仕事を奪われぬよう、人間力を高めるしかない。これからの時代を担う、東高生に大いに期待する。先を見よ、今を感じよ、東高生!
後進は 当たり前田の 無尽蔵
明日から、海外研修引率のため、ニュージーランドへ向かう。生徒の充実度を上げることに専念する日本を離れるため、一時、学校の仕事から逃亡できると思っていたが、今はメールが仕事を運んでくる。やはり、便利は不便だ(泣)。